「行政書士の資格に興味があるけど、ネットで“3年以内に9割が廃業する”って見て、ちょっと怖くなりました。資格を取っても意味がないんじゃないですか?」

これは実際に私が知人から相談されたときの言葉です。

そして、かつての私もまさに同じことを思っていました。

行政書士の資格を取ろうと決めたとき、真っ先に検索したのは「行政書士 仕事ない」「行政書士 意味ない」「行政書士 廃業率」みたいな不安を煽るようなワードばかり。

すると出てくるのは、希望の光よりも絶望的な話ばかりです。

「9割が廃業」「稼げない」「食えない」「資格だけあっても意味がない」――。

見れば見るほど、「やっぱりやめた方がいいのかな?」と気持ちが揺らいでいったのを今でも覚えています。

でも、実際に学び、資格を取得し、行政書士の世界を少しでも知った今だからこそ、私はこう言いたい。

ネットの情報は“参考”にすべきですが、“鵜呑み”にすべきではありません。

本当の現実を、自分の目と足で確かめた上で判断してほしいんです。

今回は、「行政書士はなぜ廃業が多いと言われるのか?」というテーマを掘り下げて、事実と現実、そして私なりの視点を交えて、詳しくお話ししていきます。


「3年で9割廃業」という噂の出どころは?

まずは、このよく見るフレーズから。

「行政書士は3年以内に9割が廃業する」

これは一見インパクトのある数字ですが、明確な統計的根拠はありません。

行政書士会が発表しているような公式の廃業率データを見ても、「3年で9割」という数字にはなっていないんです。

じゃあこの数字、どこから来たのか?

おそらくですが、「開業者のうち、数年で登録をやめる人が多い」という実態から、過剰に解釈されたものだと思います。

たとえば、登録はしたものの実際にはほとんど活動せず、数年で更新しなかった人や、副業として始めたけど本業が忙しくなって辞めた人など。

つまり、「本気で開業して勝負したけど、生活できなくて廃業した人」だけでなく、そもそも最初から本気でやっていなかった人も含まれているんです。

実際、行政書士試験は合格者の約半数が登録しないとも言われています。

その理由も、「とりあえず資格だけ取っておこう」「独立は将来の選択肢として考えているだけ」という人が多いから。

そういった背景を無視して「9割廃業」という一文だけが一人歩きしている。

これは非常に残念なことだと私は思います。


廃業する人に共通していることとは?

では、実際に行政書士として登録し、事務所を開いたものの辞めていく人には、どんな傾向があるのでしょうか。

私が実際に交流した中で感じた共通点がいくつかあります。

①「資格を取れば仕事がもらえる」と思っていた

これはかなり多いです。

「国家資格を持っているんだから、そのうち仕事が入ってくるだろう」という受け身の姿勢。

でも現実はそんなに甘くありません。

行政書士として活躍している人は、資格を“武器”として自分から動いて仕事を取りに行っています。

開業初期は、知名度も信用もゼロです。

営業もSNS活用も、セミナー参加も、チラシ作成も、すべて自分でやる必要があります。

資格だけで仕事が来るのは、よほどの特化分野や人脈がある人に限られます。

②そもそもビジネス経験がなく、経営感覚がなかった

行政書士事務所は“事業”です。

開業するということは、あなたが社長になるということ。

当然、集客や売上管理、コスト感覚、商品(サービス)設計といったビジネススキルが求められます。

「書類作成が得意です」「法律知識があります」だけでは、経営は成り立たないんです。

私も最初はこの壁にぶつかりました。

事務所のホームページを作るだけでも、「誰に向けて、何を売るのか?」を考えるのが大変で。

それまで会社員として守られていた立場から、一気にゼロからのビジネスを立ち上げる厳しさを実感しました。

③目指す方向が定まっていなかった

「行政書士になりたいです!…でも社労士も気になるし、宅建士も興味あって…」

こういう“資格コレクター”的な人も少なくありません。

でも、どこかで一つに絞らないと、本当の意味での実務力や専門性は身につきません。

行政書士を目指すなら、「自分はどの分野で勝負するのか?」「誰のためにどんな価値を提供するのか?」を明確にしないと、活動の軸がブレてしまいます。

「迷い」がある人ほど、なかなか行動に移せないし、結果が出る前にやめてしまう。

私も一時期、社労士の勉強と迷った時期がありましたが、「一つに集中することで突破口が見える」と気づいて、行政書士一本に絞りました。


それでも行政書士は「可能性の塊」である理由

ここまで廃業する人の特徴について話してきましたが、誤解してほしくないのは「行政書士=稼げない資格」では決してないということ。

むしろ、私にとっては「人生を変える可能性を秘めた資格」でした。

なぜなら、行政書士はとにかく業務範囲が広く、しかも時代に合わせてどんどん新しいフィールドが生まれるからです。

たとえば…

  • 外国人ビザ関連(在留資格の申請など)
  • ドローン飛行許可申請
  • 民泊許可申請
  • 相続・遺言サポート
  • 風俗営業許可
  • 古物商許可
  • 建設業許可

などなど、実に多様な分野があります。

それに加えて、「行政書士+◯◯」という掛け算で、さらに可能性は広がります。

たとえば…

  • 行政書士 × IT → Web申請の代行やクラウド活用
  • 行政書士 × セミナー講師 → 自分の知識を人に伝える
  • 行政書士 × 起業支援 → 創業融資や補助金申請のサポート
  • 行政書士 × ライター → 専門性を活かした記事執筆や出版

資格は“ゴール”ではなく“スタートライン”です。

活かすのも、腐らせるのも、すべて自分次第。

その覚悟さえあれば、行政書士は非常に魅力的な資格だと思います。


自分の「なりたい姿」を明確にしよう

資格取得を目指す人によくあるのが、「とりあえず資格を取ってから考える」という考え方です。

でも、それでは後で迷いや不安が必ず襲ってきます。

私も昔はそうでした。

でも、成功している行政書士の共通点は、「目指すゴールが明確であること」です。

  • 誰にどんなサービスを提供したいのか?
  • 自分はどんなライフスタイルを実現したいのか?
  • そのために行政書士という資格をどう使うのか?

これらをしっかり考えてから行動すれば、途中で迷うことがあっても、必ず軌道修正できます。

むしろ「迷ったら行動、行動してから軌道修正」が一番確実です。


まとめ

行政書士は「廃業が多い」と言われがちですが、その言葉の裏側には、多くの“誤解”や“思い込み”が含まれています。

資格だけでは稼げないというのは事実ですが、それは他の資格でも同じこと。

「資格をどう活かすか」「自分がどう動くか」が何よりも大切です。

ネットのネガティブな情報に惑わされるより、自分の理想とする働き方や人生に合っているかをしっかり考えてみてください。

行政書士の資格は、人生を変えるツールになり得ます。

その可能性を信じて、一歩を踏み出すかどうか。

それを決めるのは、他でもない、あなた自身です。

最後までお読みいただきありがとうございました。