私はこれまで、外国人の方が日本で働くための在留資格(ビザ)の申請を何度もサポートしてきました。

中でも「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、申請の数も多く、関心を持たれている方が本当にたくさんいらっしゃいます。

でも、正直この在留資格の名前って、ものすごくわかりにくいと思いませんか?

「技術?人文知識?国際業務?なんだそれ?」って最初は私も混乱しました。

この記事では、そんな「技術・人文知識・国際業務」について、私自身の経験談を交えながら、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

特に、これから日本で働きたい外国人の方や、外国人を雇いたい企業の方にとって、参考になる内容を目指しています。

どうぞ最後までお付き合いください。


「技術・人文知識・国際業務」ってどんな在留資格?

この在留資格は、大学卒業などで得た「学問的な知識」や、これまでの「実務経験」を活かして、日本で働くためのビザです。

少しわかりやすく言うと、ホワイトカラー系の仕事に就くためのビザ、というイメージです。

「技術」とは、理系の専門知識やスキルを使う仕事(たとえば、ITエンジニアや機械設計など)。

「人文知識」は、法学、経済学、社会学、文学など、いわゆる文系の専門知識を使う仕事(営業、企画、経理、マーケティングなど)。

「国際業務」は、語学や異文化理解などのスキルを活かす仕事(翻訳・通訳、貿易事務、海外営業など)です。

ただし、この3つのどれかに該当すればいい、というだけではありません。

それぞれの業務内容と、その人の学歴や職歴が「きちんとつながっているか?」という点が非常に重要なんです。


私が初めてこのビザ申請を担当したときのこと

ある日、外国人留学生の方から「卒業後も日本で働きたい」という相談を受けました。

彼は大学で経営学を学び、日本の企業に内定ももらっていました。

職種は営業職。

このケース、一見すると問題なさそうに見えますよね?

でも、実際の申請では「この営業職が、学んだ経営学の知識を活かす内容かどうか」が厳しくチェックされるんです。

私はそのとき、企業側に詳細な業務内容をヒアリングし、「単なるルート営業ではなく、市場分析や価格戦略の提案など、専門知識を活かした内容である」という点を明確にしました。

結果、無事に許可が下りて、彼は日本でのキャリアをスタートさせることができました。

今でもそのときの達成感は忘れられません。


審査でよく見られるポイント

この在留資格では、入管は以下の点をとても厳しく見ています。

1. 業務内容と学歴・職歴との関連性

大学で何を学んだか?その学びが仕事に活かされるか?

これが最も重要です。

「観光学を学んで、ホテルの営業に就く」ならOKですが、「観光学を学んだけど、プログラマーになる」となると説明が必要です。

もちろん、実務経験がある場合は、それを補うこともできます。

2. 雇用契約の内容

労働条件が日本人と同等以上であるかも審査されます。

給料が安すぎたり、仕事内容が曖昧だったりすると、NGになることもあります。

実際、時給換算で1,000円を下回るような条件で申請を出してしまった企業が不許可になった例もあります。

3. 会社の実態

会社がちゃんと事業をしているかどうかもチェックされます。

最近は、名ばかりの会社や、虚偽申請をするブローカー的な業者もいて、入管もかなり慎重になっています。


よくある勘違いと注意点

このビザに関して、私が現場でよく見かける誤解やトラブルについても触れておきます。

「通訳だから大丈夫でしょ?」は危険

「国際業務」でよくあるのが、コンビニや飲食店で働く外国人が「通訳業務」として申請してくるケース。

でも、実態はレジ打ちや厨房の仕事ばかり……。

これでは「技術・人文知識・国際業務」としては認められません。

通訳業務といっても、翻訳業務の比重が高かったり、商談のサポートをしたりと、ある程度の専門性が求められます。

学歴が足りない場合はどうする?

このビザは基本的に「大学卒業以上」または「10年以上の実務経験」が必要です。

専門学校卒業でも、専門士の称号がある場合はOKなこともありますが、学校や専攻内容によっては難しい場合もあります。

そういうときは、別の在留資格(たとえば「特定技能」や「技能」など)を検討する必要があります。


企業が気をつけるべきこと

企業側も、「日本語ができるから採用したい」と安易に考えていると、あとで困ることになります。

私が担当したあるケースでは、社長さんが「中国語ができるから、うちの貿易部門で何でもやらせたい」と言っていたのですが、いざ職務内容を書いてもらうと「雑用やメール対応」が中心でした。

結局、そのままでは許可が出ないため、業務内容を整理し、「市場調査」や「翻訳業務」を中心に再構成し直しました。

企業の側にも、入管が求める水準の理解と準備が必要です。


もし不許可になってしまったら?

万が一、不許可になった場合でも、まだチャンスはあります。

理由書をしっかり読み、どこが問題だったのかを確認し、必要であれば再申請することも可能です。

私自身、過去に「業務内容が曖昧」とされて不許可になった申請を、企業と一緒に丁寧に見直し、無事再申請で許可が下りたことが何度もあります。

あきらめる前に、専門家に相談してみることをおすすめします。


まとめ

「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、ホワイトカラー系の仕事に就くための重要なビザです。

でも、その中身や審査のポイントはなかなか複雑で、理解しにくい部分も多いです。

私自身、何度も現場で経験してきましたが、学歴・業務内容・会社の体制、この3つがしっかりと結びついていないと、許可が下りないことが多いと実感しています。

逆に言えば、ポイントを押さえて準備すれば、ちゃんと道は開けます。

日本で働きたい外国人の方。

外国人を採用したい企業の方。

どちらにとっても、この在留資格は大きなチャンスになるものです。

この記事が、その一歩を踏み出すための手助けになればうれしいです。

今後も、わかりにくい在留資格の情報を、できるだけやさしく、わかりやすくお届けしていきたいと思います。